広島で暮らしていると、台風や豪雨、土砂災害に比べて地震の危険性はそれほど高くないのではないかと感じる人もいますが、県内や周辺には複数の活断層があり、想定上は震度6強となる地域もあるため、地震が少ない地域だと決めつけることはできません。
特に広島市、廿日市市、大竹市などがある県西部では、岩国-五日市断層帯や広島湾-岩国沖断層帯が生活圏の近くに分布し、安芸灘の海底にも地震を起こす可能性がある断層帯が確認されているため、内陸地震と海域の地震を分けずに考える必要があります。
ただし、活断層が近いという情報だけで自宅の危険度を正確に判断することはできず、将来の地震発生確率、想定される揺れ、地盤の増幅、液状化、津波、土砂災害、建物の耐震性などを組み合わせて確認することが重要です。
ここでは、地震調査研究推進本部、広島県、広島市、防災科学技術研究所などの公表情報をもとに、広島に関係する主な活断層の特徴、危険度の受け止め方、地域差、自宅周辺の調べ方、被害を減らすための備えを具体的に整理します。
広島の地震と活断層はどれほど危険か

結論からいえば、広島は全国で最も地震発生確率が高い地域だと一括りにすることはできないものの、最大規模の地震が発生した場合には深刻な被害が想定される地域であり、危険度が低いと安心できる状況でもありません。
安芸灘断層帯では今後30年以内の地震発生確率が0.1%から10%、岩国断層区間では0.03%から2%と評価されている一方、己斐断層区間、五日市断層区間、広島湾-岩国沖断層帯では必要なデータが不足し、確率が不明とされています。
確率が不明であることは発生しないという意味ではないため、数値の大小だけで安全性を判断せず、地震が起きた場合の揺れの強さと、自宅や勤務先がどのような被害条件を抱えているかまで確認することが大切です。
先に押さえたい結論
広島の地震危険度を端的に表すなら、発生時期を正確に予測することはできないものの、県西部や沿岸部を中心に震度6弱から6強の強い揺れが生じる地震像が複数想定されているため、日常的な備えが必要な地域だといえます。
2025年11月に公表された広島県地震被害想定調査では、岩国断層区間から己斐断層区間までが連動する地震について、県西部を中心に最大震度6強、やや広い範囲で震度5強以上の揺れが見込まれています。
同想定では、設定された季節、時間帯、風速、建物条件などのもとで、全壊する建物が最大約6万6,000棟、死者が最大約2,100人に達する結果も示されていますが、これは個々の住宅の被害を予言する数字ではなく、対策を検討するための被害像です。
一方で、住宅の耐震化や家具固定、津波からの早期避難などを進めることで被害を大幅に減らせる試算も示されているため、危険度を知る目的は恐怖を強めることではなく、対策の優先順位を明確にすることにあります。
広島県の公表資料は広島県地震被害想定調査報告書で確認できるため、県全体の数字だけでなく、自分が住む市町の想定結果にも目を通しておくと判断しやすくなります。
危険度を判断する基準
活断層の危険度を比べるときは、今後30年以内の発生確率だけを順位のように見るのではなく、想定マグニチュード、生活圏との距離、地盤条件、建物の耐震性、二次災害の可能性を合わせて判断する必要があります。
確率が比較的高くても被害が限定的になるケースがある一方、発生確率が低い、または不明であっても、人口や建物が集中する場所の直下で発生すれば被害が大きくなるため、確率と被害規模は別の軸として整理しましょう。
| 確認項目 | 示している内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 長期確率 | 一定期間内の発生可能性 | ゼロでも確実な安全ではない |
| マグニチュード | 地震そのものの規模 | 震度とは異なる |
| 想定震度 | 地点ごとの揺れの強さ | 地盤で変化する |
| 地盤条件 | 揺れの増幅や液状化傾向 | 近距離でも差が出る |
| 建物条件 | 倒壊や室内被害の受けやすさ | 築年や構造で異なる |
同じ断層による地震でも、山地の硬い地盤、河川沿いの低地、埋立地では揺れ方や液状化の可能性が異なり、道路の閉塞、停電、断水、避難の難しさまで含めると実際の生活への影響にも大きな差が生じます。
そのため、広島県全体を一つの危険度で表すのではなく、県の被害想定、市町の防災マップ、J-SHISの地点情報、建物の資料を順番に重ねて、自分に関係する危険を絞り込む方法が現実的です。
安芸灘断層帯
安芸灘断層帯は、広島県江田島市沖から山口県岩国市沖にかけて分布する長さ約26キロメートルの断層帯で、右横ずれを主体としながら北西側が相対的に隆起する成分を伴うと評価されています。
地震調査研究推進本部の長期評価では、想定される地震規模はマグニチュード7.2程度、今後30年以内の発生確率は0.1%から10%とされ、主な活断層の中では確率の最大値が高いグループに含まれます。
0.1%から10%という幅が大きいのは、過去の活動時期や平均活動間隔に不確実性があるためで、上限値だけを使って間もなく発生すると断定することも、下限値だけを使って心配がないと判断することも適切ではありません。
2025年の広島県被害想定では、安芸灘断層帯による地震で県南西部の一部に震度5強から6弱の揺れが見込まれ、津波による人的被害も大きくなる条件が示されているため、沿岸部では揺れへの備えと避難行動を同時に考える必要があります。
海域の断層は自宅から線として見えにくいものの、江田島市、大竹市、廿日市市、広島市沿岸部などでは無関係とはいえず、津波ハザードマップで浸水区域、避難先、海や河川から離れる経路を確認しておくことが重要です。
岩国断層区間
岩国断層区間は広島県大竹市から山口県周南市方面に延びる区間で、広島県と山口県の県境付近に住む人だけでなく、広島県西部の広い範囲に強い揺れを及ぼす可能性がある活断層として評価されています。
地震調査研究推進本部の評価では、単独で活動した場合の規模はマグニチュード7.6程度、今後30年以内の発生確率は0.03%から2%とされ、主な活断層の中では確率の最大値がやや高いグループに含まれます。
確率だけを見ると日常生活で実感しにくい数字ですが、マグニチュード7級後半の内陸地震が生活圏に近い場所で発生すれば、建物倒壊、家具転倒、道路寸断、斜面崩壊、長期断水などが同時に起こるおそれがあります。
地震本部は、己斐、五日市、岩国の各区間が基本的には別々に活動するとしながらも、複数区間が同時に活動する可能性を否定できず、その場合はマグニチュード7.9から8.0程度となる可能性も示しています。
連動ケースの確率は求められていませんが、広島県の2025年想定では防災上の厳しいケースとして被害計算に用いられているため、大竹市や廿日市市だけでなく広島市を含む県西部でも、住宅耐震化や生活物資の備蓄を後回しにしないことが大切です。
己斐断層区間
己斐断層区間は、広島市安佐南区から西区や沖合方向へ延びる区間で、市街地や住宅地に近いことから、発生確率の数値が示されていなくても被害の大きさという面では注意が必要な活断層です。
現在の地震本部の区分では長さ約23キロメートルの区間として整理され、全体が活動した場合にはマグニチュード7.1程度の地震が発生すると推定されていますが、過去の詳しい活動時期や平均活動間隔の情報が十分でないため、長期確率は不明です。
広島市が平成25年度の地震被害想定をもとに公開している地震防災マップでは、従来の己斐-広島西縁断層帯による地震で、中区、東区、西区、安佐南区に最大震度6強の区域が生じる想定が示されています。
古い評価と現在の長期評価では断層の区分や想定規模が異なるため数字を単純に比較することはできませんが、市街地に近い浅い地震では震源からの距離が短く、緊急地震速報を受けてから強く揺れるまでの時間が短くなる可能性があります。
西区や安佐南区だけを危険地域と決めつけるのではなく、広島市の揺れやすさマップと防災カルテを使い、小学校区単位で最大震度、液状化、建物被害、ライフライン被害を確認することが重要です。
五日市断層区間
五日市断層区間は、広島市安佐北区から佐伯区を経て廿日市市方面へ延びる活断層で、広島市西部の住宅地や交通網に近い場所を通るため、周辺で生活する人にとって関係の深い地震源です。
地震本部の長期評価では、全体が一つの区間として活動した場合にマグニチュード7.2程度の地震が発生し、3メートル程度の右横ずれを生じる可能性があるとされています。
最新活動時期は7世紀以後から12世紀以前と推定されていますが、平均活動間隔や平均的なずれの速度を判断するデータが不足しているため、今後30年以内の発生確率は算出されていません。
確率が不明でも、広島市の従来の想定では五日市断層による地震で安佐南区と佐伯区に最大震度6強の区域が生じる結果となっており、断層周辺では建物や擁壁、ブロック塀、斜面の状態にも注意が必要です。
佐伯区や廿日市市で住宅を購入するときは、断層線からの距離だけで物件を選ぶのではなく、地盤の成り立ち、造成履歴、接道状況、築年、耐震診断の有無、避難先まで含めて比較することが現実的な判断につながります。
広島湾-岩国沖断層帯
広島湾-岩国沖断層帯は、広島市沖から山口県岩国市の陸域にかけて延びる長さ約38キロメートルの断層帯で、海底部分を含むため普段は存在を意識しにくいものの、広島湾沿岸の都市や島しょ部に関係する地震源です。
地震本部の評価では、全体が活動した場合にマグニチュード7.5程度の地震となり、断層近傍の地表や海底で上下成分を伴う3メートル程度の右横ずれが生じる可能性があるとされています。
一方で、最新活動時期と平均活動間隔が分かっていないため、今後30年以内の地震発生確率は不明であり、数値を使った単純なランキングでは危険度を表せません。
広島市の地震防災マップでは、この断層帯による地震で中区、東区、南区、西区、安佐南区、安芸区、佐伯区に震度6弱となる区域が想定され、市中心部を含む広い範囲が影響を受ける地震像となっています。
海域で発生する地震では、揺れ、液状化、港湾施設の損傷、津波、橋や沿岸道路の通行支障が重なる可能性があるため、沿岸部では自宅が直接浸水しない場合でも、通勤や物流、医療、停電への間接的な影響を想定しておきましょう。
見落とせない地震像
広島の地震リスクを活断層だけで考えると、南海トラフ巨大地震や安芸灘から伊予灘、豊後水道を震源域とするプレート内地震を見落とすため、実際の防災では複数の地震像を並行して考える必要があります。
広島市や広島県の想定では、県内に大きな影響を与える地震として内陸活断層、海域の断層、プレート間地震、プレート内地震が扱われており、それぞれ揺れの広がり方や津波の有無が異なります。
- 岩国-五日市断層帯による直下型地震
- 安芸灘断層帯による地震
- 広島湾-岩国沖断層帯による地震
- 安芸灘~伊予灘~豊後水道の地震
- 南海トラフ巨大地震
- 特定されていない断層による地震
2025年の県想定では、南海トラフ巨大地震で県南東部を中心に広い範囲が震度5強以上、最大震度6強となる可能性が示されており、活断層から離れた地域でも強い揺れへの備えが必要です。
地図に描かれている主要活断層の線から離れていることは安心材料の一つにはなりますが、地下に未確認の断層が存在する可能性や、遠方の大規模地震で強く揺れる可能性は残るため、最低限の耐震対策と備蓄は県内のどこでも必要です。
地域によって変わる揺れやすさ

同じ広島県内でも、想定される震源との距離、表層地盤、地形、造成方法、海や河川との位置関係が異なるため、地震による危険の種類と優先順位は地域によって変わります。
活断層の位置図だけでは、揺れが増幅しやすい低地、液状化しやすい埋立地、地震時に崩れる可能性がある斜面、津波浸水が想定される沿岸部を十分に判断できません。
市や町の名前だけで安全性を比較するのではなく、250メートルメッシュや小学校区、最終的には敷地単位まで範囲を狭めて調べることが重要です。
広島市西部
広島市西部は、己斐断層区間や五日市断層区間に近い地域があり、内陸地震による強い揺れを考える必要がある一方、沿岸や河川沿いでは液状化や津波、山沿いでは斜面災害も重なるため、場所ごとに注意点が変わります。
西区、佐伯区、安佐南区は一つの危険度で表せる地域ではなく、山地、丘陵地、扇状地、三角州、埋立地などの地形が混在しているため、数百メートルから数キロメートルの違いで想定被害が変わる場合があります。
| 立地の例 | 主に確認する危険 | 優先する資料 |
|---|---|---|
| 断層周辺 | 強い揺れと地表変位 | 断層位置図 |
| 河川沿いの低地 | 揺れの増幅と液状化 | 地盤・液状化図 |
| 広島湾沿岸 | 津波と港湾被害 | 津波ハザードマップ |
| 丘陵地の造成地 | 盛土や擁壁の変状 | 造成履歴と現地状況 |
| 山際の住宅地 | 崖崩れと道路閉塞 | 土砂災害マップ |
例えば断層から比較的離れていても、軟弱な地盤や古い木造住宅が重なれば被害は大きくなりやすく、逆に断層に近くても十分な耐震性能を持つ建物では倒壊リスクを抑えられる可能性があります。
住所だけで結論を出さず、広島市の防災カルテで小学校区の傾向を確認した後、建築確認資料、地盤調査報告書、擁壁の状態などを個別に調べる順序が適しています。
沿岸部と低地
広島湾沿岸や河川下流部の低地では、強い揺れに加えて液状化、津波、地盤沈下、道路や橋の損傷、上下水道の停止などが重なる可能性があるため、建物が倒壊しない場合の生活継続も考える必要があります。
広島市中心部には太田川のデルタ上に発達した地域があり、埋立地や旧河道を含む場所もあるため、断層からの距離だけでは揺れやすさや液状化傾向を判断できません。
- 液状化危険度
- 津波浸水区域
- 基準水位と浸水深
- 海抜と避難先の高さ
- 橋を使わない避難経路
- 断水時の給水拠点
液状化が起きても必ず建物が倒壊するわけではありませんが、建物の傾斜、配管の破損、マンホールの浮き上がり、道路の段差などにより、避難や復旧が難しくなることがあります。
沿岸部では広島市津波ハザードマップなどを確認し、自宅から最寄りの避難場所だけでなく、夜間、停電時、橋が使えない場合にも移動できる複数の経路を考えておきましょう。
東部と北部
広島県東部や北部は、広島市西部に近い活断層から離れている地点が多いものの、地震の危険がないわけではなく、南海トラフ巨大地震、安芸灘から伊予灘の地震、長者ヶ原-芳井断層などの影響を地域ごとに確認する必要があります。
福山市周辺では、岡山県井原市から福山市に延びる長者ヶ原-芳井断層があり、県東部では南海トラフ巨大地震による揺れや津波も想定されるため、県西部とは異なる地震像を優先して確認することになります。
県北部の山間地域では、沿岸部より津波や液状化の問題が小さい地点がある一方、地震による斜面崩壊、落石、橋梁の損傷、集落への道路寸断、停電や通信障害の長期化が生活上の大きなリスクになります。
人口密度が低い地域では被害人数が少なく見積もられても、避難所や医療機関までの距離が長く、復旧に時間がかかる場合があるため、食料、水、燃料、常備薬を都市部より多めに準備する判断も必要です。
市町の被害想定やハザードマップに加え、通勤路、通学路、集落へ入る道路、冬季の積雪条件まで確認し、地震後に孤立する可能性がある場合は地域内での助け合いと連絡方法を決めておきましょう。
自宅周辺の危険度を確かめる方法

広島のどこが危険かを知るには、広域的な活断層位置図を見た後、地点ごとの揺れやすさ、市町の被害想定、液状化や津波の区域、建物の耐震性へと段階的に範囲を狭めていく方法が適しています。
一つの地図だけで安全か危険かを決めると、活断層は近くないものの軟弱地盤である場所や、揺れは比較的小さくても津波や斜面崩壊の影響を受ける場所を見落とす可能性があります。
住宅購入、賃貸契約、リフォームを検討している場合は、地図の確認に加えて、売主や管理会社が保有する建物資料、地盤調査、過去の修繕記録まで確認しましょう。
公式地図の使い分け
危険度を調べるときは、国、県、市町が公開する地図ごとの役割を理解し、最初に広域的な地震像を把握してから、自宅住所や小学校区に近い情報へ進むと迷いにくくなります。
地図に示される断層線や区域には調査精度や縮尺による幅があり、表示された境界の外側なら被害が発生しないという意味ではないため、線の位置だけを絶対的な境界として扱わないことが重要です。
| 資料 | 分かること | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 地震本部 | 断層の規模と長期評価 | 地震像の把握 |
| J-SHIS | 地点別の揺れと地盤 | 住所周辺の比較 |
| 広島県想定 | 県全体の被害像 | 広域影響の確認 |
| 市町防災マップ | 地域別の被害情報 | 避難計画の作成 |
| 国土地理院地図 | 地形と土地の成り立ち | 低地や盛土の確認 |
広島市内では、防災カルテに小学校区ごとの最大震度、液状化、建物被害、ライフライン被害などがまとめられているため、家族で地域の特徴を共有する資料として利用できます。
地図の作成年や評価基準日が異なる場合は、新しい資料を優先しつつ、古い資料にしかない詳細情報も参考にし、数値が違う理由を断層区分や想定条件の違いから確認しましょう。
地盤情報の読み方
J-SHIS地震ハザードステーションでは、主要活断層帯の位置、想定地震による揺れ、今後30年間に一定震度以上となる確率、表層地盤の増幅率、微地形区分などを地点ごとに確認できます。
地図を拡大して調べたい地点を選ぶと、同じ市区町内でも地盤増幅率や震度6弱以上となる確率に差があることが分かるため、勤務先、学校、実家、よく利用する施設も個別に調べると実用的です。
- 30年震度6弱以上の確率
- 表層地盤増幅率
- 微地形区分
- 想定地震地図
- ハザードカーブ
- 影響度が大きい地震
確率論的地震動予測地図の数値は、評価基準日から一定期間内にその震度以上の揺れに見舞われる可能性を示すものであり、特定の断層がその確率で動くことを直接示しているわけではありません。
また、メッシュ単位の地盤情報は個別敷地の地盤調査に代わるものではないため、住宅の新築や購入ではボーリング資料、地盤調査結果、基礎形式、地盤改良の記録も確認する必要があります。
建物情報の確認
地震による人的被害を左右する大きな要因は建物の耐震性であり、活断層や地盤の危険度が同程度でも、建築時期、構造、劣化、増改築、接合部、基礎の状態によって倒壊の可能性は変わります。
木造住宅では、1981年6月以前の旧耐震基準で建てられた建物を優先して耐震診断の対象にし、2000年以前の建物についても壁の配置、接合金物、地盤に応じた基礎などを専門家に確認してもらうと安心です。
新耐震基準の建物であっても、シロアリ被害、雨漏り、柱や筋交いの撤去、無理な増築、重い屋根、開口部の偏りなどがあれば、本来想定された耐震性能を発揮できない可能性があります。
マンションでは築年だけでなく、構造形式、耐震診断や大規模修繕の履歴、受水槽や非常用電源の位置、エレベーター停止時の移動、長周期地震動への家具対策を確認しましょう。
賃貸住宅でも、建築年月、構造、避難経路、家具固定が可能な壁、寝室の安全性を確認できるため、地震対策は持ち家だけの問題ではなく、契約前の比較項目として扱うことが大切です。
活断層以外に重なる被害要因

地震の危険度は揺れの強さだけでは決まらず、液状化、津波、斜面崩壊、火災、停電、断水、道路寸断などが重なることで、避難の難しさや生活への影響が大きくなります。
広島県は山地が多く、沿岸には都市や工業地帯が広がり、河川下流部には低地が形成されているため、地域によって想定すべき二次災害が大きく異なります。
自宅が直接被害を受けにくい場所でも、職場、学校、病院、橋、港、物流施設が被災すれば生活は影響を受けるため、地域全体の弱点も確認しておきましょう。
液状化
液状化は、水分を多く含む緩い砂質地盤が強い揺れを受けることで、地盤が一時的に液体のような状態になる現象で、沿岸の埋立地や河川沿いの低地などで発生しやすい傾向があります。
広島市の地震被害想定では想定地震ごとに液状化危険度が計算されており、同じ区内でも危険度が異なるため、行政区の名前ではなく住所周辺の分布を確認する必要があります。
| 主な影響 | 起こり得る状態 | 確認する対策 |
|---|---|---|
| 建物 | 沈下や傾斜 | 基礎と地盤改良 |
| 道路 | 段差や陥没 | 別の避難経路 |
| 下水道 | マンホール浮上 | 携帯トイレ備蓄 |
| 水道管 | 破損と断水 | 飲料水の確保 |
| 敷地 | 噴砂や境界変状 | 専門家への相談 |
液状化危険度が高い区域でも、地盤改良や適切な基礎によって建物被害を抑えられる可能性があり、反対に危険度が低く表示された区域でも、局所的な盛土や旧河道などの影響が残る場合があります。
土地や住宅を選ぶときは、液状化マップだけで候補から除外するのではなく、過去の土地利用、地盤調査、基礎設計、ライフライン復旧のしやすさを確認して総合的に判断しましょう。
土砂災害
地震による土砂災害は、豪雨時とは異なり、雨が降っていない状態でも斜面や擁壁が強い揺れで崩れる可能性があり、山際の住宅地や谷を造成した団地では特に注意が必要です。
広島県内には急傾斜地や谷沿いの集落が多く、地震で落石や崩土が道路をふさぐと、住宅が直接被害を受けなくても避難、救助、通院、物資輸送が難しくなることがあります。
- 土砂災害警戒区域
- 急傾斜地と崖の位置
- 大規模盛土造成地
- 擁壁のひび割れ
- 道路沿いの落石箇所
- 谷を避ける代替経路
ハザードマップの区域外でも、私有地の小さな崖、老朽化した石積み、排水不良の擁壁などが地震時に変状する可能性があるため、現地で傾き、膨らみ、亀裂、排水穴の詰まりを確認することが大切です。
地震発生後に斜面から小石が落ちる、地鳴りがする、地面に新しい亀裂ができるなどの異常を見つけた場合は、崖の下や谷側に近づかず、安全な場所へ移動して行政や消防へ連絡しましょう。
津波と火災
広島湾は島が多く外海から距離があるため、太平洋沿岸と同じ津波像になるとは限りませんが、県の想定では津波による浸水と人的被害が計算されており、沿岸部で対策が不要ということではありません。
津波は海岸だけでなく河川を遡上することがあり、浸水開始までの時間や水位は地点によって異なるため、強い揺れや長く続く揺れを感じたときは情報を待ち続けず、より高い場所へ移動する判断が必要です。
地震火災は、暖房器具、調理器具、電気配線、倒れた家具、停電復旧時の通電などから発生し、木造住宅が密集する地域や道路が狭い地域では消火活動が難しくなる可能性があります。
揺れが収まった後に安全を確かめてブレーカーを落とし、避難時にはガスの元栓を確認することが基本ですが、強く揺れている最中に無理に火元へ近づくと転倒や落下物で負傷するため、最初は身を守る行動を優先します。
津波避難と火災避難では適切な方向が異なる場合があるため、沿岸部では高い場所へ向かう経路、密集市街地では広い避難場所へ向かう経路をそれぞれ確認し、状況に応じて選べるようにしておきましょう。
被害を減らすための備え

地震の発生日を予測することはできませんが、建物倒壊、家具転倒、火災、津波、断水などによる被害は、事前の対策によって小さくできる可能性があります。
備えの優先順位は、命を守る耐震化と寝室の安全確保を最初に行い、次に避難経路と連絡方法を決め、最後に長期停電や断水を想定した備蓄を整える順序が現実的です。
すべてを一度にそろえる必要はなく、今月は家具固定、次月は水と携帯トイレ、次の休みに避難経路確認というように、小さく分けて継続することが重要です。
住宅の耐震化
住宅の耐震化は、活断層の発生確率にかかわらず命を守る効果が期待できる対策であり、特に旧耐震基準の木造住宅や、劣化、増改築、壁量不足が疑われる住宅では優先度が高くなります。
広島県は市町と連携して木造住宅の耐震化を進めており、診断や改修に利用できる制度は地域や年度によって変わるため、工事契約の前に広島県の耐震化総合窓口と居住市町へ確認する必要があります。
| 優先順位 | 行うこと | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 | 建築年月を調べる | 登記事項や確認済証 |
| 2 | 劣化箇所を確認する | 建築士や施工会社 |
| 3 | 耐震診断を受ける | 自治体の相談窓口 |
| 4 | 改修案を比較する | 複数の専門業者 |
| 5 | 補助制度を申請する | 市町の担当課 |
耐震改修は壁を増やすだけではなく、基礎、柱、梁、接合部、屋根の重さ、壁配置の偏りを全体で考える必要があり、一部分だけを自己判断で補強すると力の流れが悪くなる場合があります。
費用面で全面改修が難しい場合でも、寝室や滞在時間の長い部屋を優先した部分改修、耐震シェルター、防災ベッドなどを専門家へ相談し、何もしない状態を避ける方法を検討しましょう。
室内の安全対策
大地震で負傷する原因には、家具の転倒、食器や窓ガラスの飛散、家電の移動、収納物の落下などがあるため、建物が新しくても室内対策を行わなければ安全とはいえません。
特に寝室、子ども部屋、高齢者が過ごす部屋では、倒れる可能性がある家具を置かないことが最も確実で、移動できない場合は壁の下地に合った金具で固定し、ベッドへ倒れ込まない向きに配置します。
- 背の高い家具の固定
- テレビと電子レンジの固定
- 扉への開放防止器具
- 窓への飛散防止対策
- 通路に物を置かない
- 枕元への靴とライトの用意
粘着式や突っ張り式の器具は、家具、天井、壁の材質や設置方法によって効果が変わるため、単独で安心せず、L字金具、連結、ストッパーなどを組み合わせて転倒しにくくします。
冷蔵庫や大型家電は避難経路をふさぐ可能性があり、キャスター付き家具は揺れで大きく移動するため、玄関、廊下、階段の周辺を優先して固定状況を見直しましょう。
避難と連絡
家族の避難計画では、全員が自宅にいる前提を置かず、勤務先、学校、外出先で地震が起きた場合に、それぞれがどこへ避難し、どの手段で安否を伝えるかを決めておく必要があります。
大規模地震では電話がつながりにくくなる可能性があるため、災害用伝言サービス、携帯電話会社の伝言板、メッセージアプリ、遠方の親族を連絡中継役にする方法を組み合わせましょう。
避難先は指定避難所だけでなく、津波時の高い場所、一時的に身を守る指定緊急避難場所、在宅避難を続ける条件を区別し、災害の種類に合った場所を選ぶことが重要です。
備蓄は最低限の飲料水と食料に加えて、携帯トイレ、常備薬、モバイルバッテリー、ラジオ、衛生用品、乳幼児用品、ペット用品を家族構成に合わせて準備します。
車の燃料を半分以下にしない、浴槽の水を生活用水として活用できる状態にする、分散して物資を保管するなど、普段の生活に組み込める対策を続けると、急な地震にも対応しやすくなります。
広島で地震に備える判断軸
広島の地震と活断層の危険度は、県全体を安全または危険の一言で分類できるものではなく、安芸灘断層帯、岩国-五日市断層帯、広島湾-岩国沖断層帯、南海トラフなど複数の地震像と、地点ごとの地盤条件を重ねて考える必要があります。
長期確率が示されている安芸灘断層帯や岩国断層区間だけでなく、確率が不明な己斐断層区間、五日市断層区間、広島湾-岩国沖断層帯についても、発生した場合の規模や市街地との近さを踏まえて備えることが大切です。
最初に地震本部や広島県の資料で広域的な地震像を把握し、次にJ-SHISや市町の防災マップで自宅周辺の揺れ、液状化、津波、土砂災害を確認し、最後に築年、構造、地盤調査、家具配置など自宅固有の条件を調べましょう。
活断層から離れた場所へ移ることだけが対策ではなく、住宅の耐震化、寝室の安全確保、家具固定、避難経路の確認、携帯トイレや水の備蓄を進めることで、現在の住まいでも人的被害と生活上の負担を減らせる可能性があります。
危険度の数字を見て不安になるだけで終わらせず、今週は公式地図の確認、今月は家具固定、次に耐震相談というように具体的な行動へ置き換えることが、広島で地震から命と暮らしを守る最も確実な備えになります。



